寄席のある町

 いまの職場はいわゆる高級住宅街が多く、とても文化的な雰囲気に満ちて、住まう人々も財布=心の余裕があるのか、穏やかなこと甚だしいのですが、ふと、寄席がないことに気づいたわけです。シネコンはあるが、演芸場がないなと。
 前の職場はザ・下町といった風情で、にぎやかではあるけど酔っ払いやワケアリな人たちが、袖すり合っちゃ何がしかのドラマを生んでいるようなところで、まあいろいろと大変だったわけなのですが、けれども魅力的な町でした。何故ならそこにはどっかと演芸場があったから。噺家が、役者が、そこに立って芸を披露する。それはまさしく町に根を張る人々によって支えられた娯楽の殿堂であり、誇るべき拠点といえましょう。
 なんというか、巨大なショッピングモールで、きれいなものばかり見て楽しむよりかは、情の通う空間で卑しさも愚かしさも笑いながら噛みしめるように味わったほうが、心は豊かになると思うわけなのですよ! と、横浜にぎわい座も三吉演芸場もちょっと遠いので、横浜市北部にも小屋ほしいぜ、てな具合に頭に浮かんだことをそのまま書いてみた。