デジタル全盛の今はともかく、昔は基本の技として、カケアミはみんな練習したものです。私をこっち側の趣味に引きこむきっかけとなった「不思議の国の千一夜」という作品でも、カケアミ技法は頻繁に使われていました。しかしトーンワークが世の作品を席巻し、ゆっくりとしかし確実にカケアミは廃れていきました。やがてそれが普通の状態となった90年代にあって、
アナクロの極みとすらいえるこの武器を磨き続けてきた作家がいます。
山川直人氏――。当時はまだ
東京流通センターを中心に開催されていましたが、既にオリジナルオンリーの
同人誌即売会としては国内最有力と認知されていた「
コミティア」で名を馳せるも、長い雌伏の時を経て、現在ようやく
コミックビームで足場を固めつつある漫画家です。今回の作品は他誌で掲載されていた連載をまとめたものの再編集版です。限定されたキャラの織り成す物語は切ない結末とあいまって、何度も読み返す類の作品ではありませんが、通勤や通学の時間を意義あるものに換えてくれることだけは保証したりしなかったりしますよ。
ナイトクラブ特需で出た最終巻。
秋田書店は前回は途中までしか刊行しなかったとかとか。いやほんと頼みます。「ぶかつどう」コミックス化お願いします。出せば絶対売れるからー。
